還暦の年、シューマン「トロイメライ」を弾く!

ロベルト・シューマン(1810年〜1856年)は、ドイツ・ロマン派を代表する作曲家であり、音楽評論家です。文学と音楽を融合させた、感情豊かで幻想的な作風で知られています。モーツァルト・ベートーヴェン、ブラームス等と比較すると、やや地味な存在に感じられるかもしれませんが、作風は個性があり、実に存在感のある曲を多く残しています。
特に個人的には、これまでのシューマンとの出会いと言えば、4つの交響曲でした。ベートーヴェンの古典的な形式を継承しつつも、ロマン派らしい詩的な情感や妻クララへの愛、精神的な葛藤が色濃く反映されているのが特徴です。独特の少し物悲しい旋律が聞く者を虜にしてしまう嫌いがあります。
そして、恒例となった今年2026年夏のファミリーピアノイベントで、私自身が弾く曲目の一つに選んだのが、このシューマン作曲のピアノ曲「トロイメライ」でした。
誰しもが一度はどこかで耳にしたことのある旋律です。
シューマンの作品は、自身の結婚前の「ピアノ曲の時代」、結婚した1840年の「歌の年」など、時期によって特定のジャンルに集中する特徴があると言われています。その中で、彼の代表曲の一つが『子供の情景』より「トロイメライ」(ピアノ曲)があります。大人の視点から子供の世界を回想した傑作集であり、特に第7曲「トロイメライ(夢)」は世界的に有名です。
聞く分には実に綺麗な旋律で、わずかA4サイズ1枚に収まる楽譜で、あたかも簡単に弾ける短い曲だと思われがちですが、実際に弾いてみると、コスパに見合わない曲の代表曲であると実感しました。指の規則的な使い方を遵守する必要があるのは言うまでもなく、また情緒的な旋律が畳み掛けるように奏でる曲風の魅力は、少しずつ弾けるようになってきた時に初めてその喜びを弾き手に感じさせてくれるものでした。
ピアノレッスンの中で先生に指摘されて分かったのですが、このトロイメライの曲の中で、シューマンが妻クララへの愛を音にした箇所があると聞き、作曲家にはこの特技があることを実に羨ましく思ってしまいました。恋文は青春時代に書いた記憶は私にもありますが、流石に作曲は誰にでもできる芸ではありません。シューマンさん、流石ですね!
何度も何度も繰り返しレッスンを重ね、現在漸く7月のイベントで弾けそうな自信が生まれてきました。
継続は力なり、まさにその言葉通りです。
シューマンの曲の旋律の物悲しさ、ある意味憂鬱なイメージを抱かせる理由・背景には、彼自身の不安定な精神状態があったはずだと思っています。
彼は若い頃から精神的な不安定さに悩まされていたと言われており、1854年に幻聴などの悪化からライン川へ投身自殺を図っています。一命を取り留めたものの、その後は精神病院で46歳の若さで生涯を閉じたという経歴があります。
なるほど、そのような精神的な葛藤の中で生み出された名曲であったのか、4つの交響曲にはその彼の独特な旋律が惜しみなく滲み出てくる印象を持ちます。
今年は還暦を迎える記念すべき年です。その年の夏に、心を込めて、納得のいく形で、この名曲「トロイメライ」を最後まで弾ききりたいと思っています。
ピアノを生涯の趣味とするリスク管理コンサル 髙見 広行

