担保は与信を生まない!

皆さん、週明けの月曜日を迎えておりますが、如何お過ごしですか?

さて、本日は「与信管理」のごく基本的な話にはなりますが、非常に重要な考え方をご紹介させて頂きます。

それは、表題にあります「担保は与信を生まない!」という考え方です。

これは一体何のこと?と思われる方が大半ではないかと推察します。そうですよね。ピンと来ませんよね。

もし、すぐに理解できる方がおられれば、それは与信管理業務に触ったことのある方に違いありません。

与信(よしん)とは、人(個人・会社)に信用を与える行為のことです。

信用を与えるというのは、お金を貸す、後払いで商品・サービスを販売することを意味します。

例えば、休日に一人で家のそばを散歩していたとします。その時、すれ違った初めて会う紳士風の品のある50代のお金持ちそうな中年男性から、「すいません。私、今ちょっと緊急でどうしても10万円のお金を用意立てる必要があるのですが、この腕時計をお金を返金するまで担保としてお渡ししますので、今10万円を貸してもらえませんか?」という場面に出くわしたら、皆さんは一体どうされますか?

現実的に、このキャッシュレスの時代に、皆さんが財布に10万円という大金が入っている可能性は皆無です。従い、皆さんにコンビニや銀行に行って現金を下ろす手間が発生します。その時点で、そもそも初めて会う人でよく分からないし、大抵の方は直感で何か面倒だと思って、断るのではないでしょうか?

また仮に断るにしても、10万円の現金を何故緊急で今必要としているのか、普通は確認されますよね?そして、何故それを初めて会う私から借りようとしているのか?何故自分でコンビニや銀行に行き、口座から現金を下ろさないのか?という素朴な疑問にぶち当たります。

この考え巡らせる行為そのものが、「与信(よしん)」なんです。皆さんは、お金を貸す相手のことを僅かな情報で探り、想像し、そして判断を下します。要は、本件の場合、10万円をこの人に貸して本当に返ってくるのかどうかについて、無意識に考えているのです。

そこで、ここで登場するその中年男性が「腕時計」を返金するまで皆さんに預けるという行為が出てきます。これが、まさに担保の提供行為と言えます。

腕時計もピンからキリまで存在しますし、時価評価額も判断し難いところがあります。中古価格でも、物によっては100万円以上するものから、1万円もしないものまで、本当にこればかりはその道の専門家でないとすれば、普通は評価額については何とも言えないはずです。

では、仮に皆さんが大の時計マニアで中古時計の評価額についてもそれなりに知見のある方だと仮定して、その時計が明らかに100万円以上する高価なものであると確信が持てた場合、皆さんだったら如何なされますか?

すぐにコンビニで10万円を下ろしてその方に現金を貸し、その場で100万円相当の価値を有すると思われる時計を担保として預かることを決断されますか?返済期限は7日後、名前と住所、連絡先となる携帯番号を交換する、できれば名刺をもらうなど、やることは沢山ありますが、身元の確認行為は普通行いますよね?

本件の場合、正式な金銭消費貸借契約を作成し結ぶ時間はないでしょうが、お金を貸借する行為に関する基本条件だけは簡単なメモにして、その場でお互いが認識する(できればその場で紙に書いたものに署名する)ことが望ましいです。現実にできるかどうかは分かりませんが、相手が本当に10万円を必要としているのであれば、対応はしてくれるはずです。

そして、7日後に如何なる事情があるにせよ返金がなされない場合は、「担保」として預かっていた時計は、債権者である皆さんが自由に売却処分して現金化して構わないことを意味します。勿論、価値だけは確認して、そのまま保有し続けることも可能です。近い将来、自分の好きな時に売却することもできます。

計算通りにいけば、仮に10万円が7日後に返ってこなくても、皆さんは、その時計を売却することで、何と90万円の利益を生み出すことになります。実においしい話ですね。

さて、皆さんは、この事例でいう10万円の現金を時計を担保にして貸されますか?という最初の問いかけに、もう一度戻ることになります。

本当に価値がある担保なのかは、実際に売却処分してみなければ誰にも分かりません。不確実性がどうしても残る部分です。そして、何よりも、貸す相手のことを皆さんは全く知らないということです。

「担保は与信を生まない」、例え担保に価値があると見做されても、与信行為を行うに際して、担保のみに依存した担保頼みの与信行為には、常にリスクが付き纏います。

やはり、まず相手のことをよく知ることから、与信は始まるのです。それは相手が個人であれ、法人であれ一緒です。

本件は、基本的な事項ではありますが、与信を考える上で実に大切な考え方になりますので、皆さまに共有させて頂きました。

リスク管理コンサル 髙見 広行

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