米国での「倒産」のイメージとは?

さて、今回もこのブログで、与信管理をテーマに投稿させて頂きます。宜しくお願いします。

「倒産」という言葉から、皆さまはまず何を真っ先に連想されますでしょうか?

字の如く、「倒れる」という言葉があるように、ネガティブなイメージが付き纏う言葉ですよね。そうなんです、負のイメージを抱かせる言葉なんです。

細かく言えば、倒産にも色々な意味が込められていますが、一般的に言われるのは、法的申請を伴う企業の破綻並びに再生のことと理解しています。

かつて日本経済もバブル崩壊後に、企業の倒産が続出した時期がありました。私自身も会社で審査部に所属していた関係で、否応なしに、毎日この「倒産」という言葉に付き合わされていました。

東京商工リサーチ様の統計データによれば、倒産件数は、2001年(平成13年)の19,164件をピークに、その前後を含めた数年間は、倒産ラッシュの時期だったと思われます。その中には、当然、銀行・証券会社等の金融機関も含まれています。銀行の場合は合併が主たる選択肢でありましたが、単独で自立できないという意味では、実質倒産であったと言っても良いと思います。

そして、あるお決まりのワンシーンが、必ずテレビの画面を通して映し出されました。

経営者一同が横に並び、そして最後に立ち上がり、債権者やお取引先に向けての「お詫び」の意味を込めて、深く一斉におじぎをするシーンです。

「この度は、皆さまに多大なるご迷惑をおかけしまして、誠に申し訳ありませんでした。」というセリフと共に。何度も深く頭を下げるシーンを思い出しますね。見ていて決して気持ちのいいシーンではありません。

ところで、倒産して企業経営者が謝るという行為が、ごく一般的に行われている日本と打って変わって、米国ではどうでしょうか?

1994年から1年間、そして2010年から8年強、米国ニューヨークに駐在していましたが、その間、その会社が取引先であるかどうかに拘らず、米国企業の倒産という事態には何度か直面しました。

しかしながら、その報道されている米国のテレビ画面上で、日本でよく見かける上記のようなシーンは、これまで一度も見たことがありません。

それどころか、堂々と「企業再生」に向けて、今後一致団結してこの困難に立ち向かうといった趣旨の発言をして、経営者が引責せずに続投するケースもよく見ました。借金(負債)のカットやリスケを金融機関等にしてもらいながら、堂々と再生に向けて悪びれもなく続投する、というスタンスなのです。

基本的には、日本の場合は、社長は引責辞任させらるケースが大半だと思いますし、主力債権者である金融機関が黙っていないでしょう。

しかし、そもそも同じ倒産でも、ここまで何故イメージが異なってくるのでしょうか?

米国における大きな枠組みの中で、法的申請には、Chapter 11とChapter7の2つがあります。前者は、皆さまもどこかで一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか?日本で言うところの、会社更生法、ないしは民事再生法に近い概念の法的申請です。そこには、倒産というよりは、企業更生・再生という意味合いが前面に立っているように感じます。一時的に資金ショートをきたしたが、債権者委員会の下で作成される更生事業計画に基づき事業が履行されれば、必ずや損益改善・資金繰り改善を実現し、企業が再生を果たすことができるというものです。従業員の雇用も、最終的には維持される形になり、企業が蘇っていく為の一つの通過点としてのステップという位置付けなのでしょう。

端的な例を挙げると、航空会社の事例が最も分かりやすいと思います。米国の大手航空会社の殆どが過去に倒産歴があり、しかも同じ会社で複数回倒産している会社もあります。

他方で、日本では、大手の事例と言えば、私も商社審査マンとして直接携わった、ある日の丸航空会社の事例がありましたが、その時の会社更生法適用申請の時の、報道振り・世の中での受け止められ方・インパクトは、かなりのものがありました。

私が勤務していた商社も、少なからず損失を蒙る事態になりましたが、その日の丸航空会社の社員の方々は、暫くの間、肩身の狭い思いをされたことと推察します。

本テーマは、日本と米国のどちらがいいのか?という議論では決してなく、国の文化によって、倒産に対する社会的な制裁の度合いが、だいぶ異なるということを皆さまにご紹介したかったというのが、背景にあります。

また別の機会で、日本での日の丸航空会社の事例や、また米国駐在時に出くわした数々の倒産事案のお話も、ここでシェアさせて頂きたいと思っております。

本日もお付き合い下さりまして、誠にありがとうございました。

Rユニコーンインターナショナル株式会社

代表取締役 髙見 広行

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