支払いパフォーマンスから見るお取引先の色分けの重要性と「丸抱え与信」のリスクの重みとは?

おはようございます。3連休は如何お過ごしでしょうか?都心部でもだいぶ気温が下がってきておりますね。体調管理には十分注意して参りましょう。

さて、今回は「与信管理」をテーマにした投稿をさせて頂くのですが、具体的には、債権回収面についてスポットを当ててみたいと思います。

お取引様との取引で一番頭を悩ませるのが、支払面に係るトラブルではないでしょうか?

事務手続き上のミスで数日入金が遅れるケースから、常に1週間前後入金が遅れるケースまで、それでもまだ事前にその旨の連絡があるお取引様であれば、債権者側としては少し安心感がありますよね。

債権回収の肝として、必ずおススメしているのは、各お取引様の支払パフォーマンスについて、きっちりと記録に残すことです。

例え相手が日本企業だからと言って、債権回収の期日までに100%支払ってくるお取引先様ばかりではないからです。期日を基点にして、いつ支払ってきたか、細かくデータで残すことが重要です。そして遅延するケースでは、その遅延理由を記録に残して下さい。その際、お取引様が説明する遅延理由を日付と共に残すことが重要で、債権者側の思い込みや推測は記録に残さないで下さい。

また遅延するケースの中で、お取引様とのやり取りが複数発生するケースでは、時系列的に全てその事実を記録に残しておいて下さい。基本的にはメールで交信することが多いでしょうが、できればエクセルシート等で管理することが望ましいと考えています。そして、最終的に支払ってきた期日を記録に残し、オリジナル期日に対して何日遅延したかを認識するようにして下さい。

実は、この作業自身が、与信管理の一部に既になっているのです。

この作業を繰り返し、記録に残していくことで、皆さまのお取引先の信用度の色分けが可能になってきます。

支払いパフォーマンスという切り口で色分けができると、それに伴い、取引量の多寡、取引歴、訪問・面談の頻度、決算書の取得の可否、業歴、業績の良し悪し(黒字か赤字か)、企業規模等、の付随データを可能な限り、一緒にエクセルデータに保存しておくと、例えば、いつも1週間程度支払いが遅延するお取引先があったとして、取引歴10年以上、毎月1回訪問して情報交換を実施、代表者の印象良し、決算書は取得できないが業績のヒヤリングは可能、自己資本10億円以上あり、などのデータがシートに残っていれば、少なくともそのお取引様に対しては、すぐに貸倒に繋がるリスクは低いと判断できます。

最初の切り口として、支払いパフォーマンスで色分けして(例えば5段階評価 A〜E)、その中で最も低い色分けのEの先を重点的にフォローすることで、合理的かつメリハリの効いた債権回収管理が可能になります。このやり方は、管理部門の人員割り当てに制約があり、細かな与信管理に時間を割くのが難しい会社様でも、簡単にできる与信管理手法になります。

勿論、支払いパフォーマンスだけで貸倒を未然に防げるのか?と問われれば、それはNOなのですが、中小規模の会社様であれば、管理要員の数も不十分、取引先から決算書を取得できる比率も少なく、訪問頻度も限定的となれば、できることは、この支払いパフォーマンスのチェックの励行以外にありません。後は、費用をかけて興信所からケースバイケースで信用調書を取得し、お取引様の情報を補完することになります。

さて、今回特にここで追加で申し上げたいのは、小規模ないしは新しい会社との「新規取引」のケースです。

悪意のあるなしに拘わらず、斯様な新規取引先様で気を付けなければいけないことは、取引冒頭から最初の半年から1年程度は、期日にきっちりと支払いを行なってきて、皆さまを安心させるという戦術があります。そしてその先に必ず出てくるのが、取引の増量要請です。即ち皆さまにとって与信枠の増枠となり、社内で決裁を必要とします。

そこで重要になってくるのが、斯様な新規取引先様の場合、大抵のケースとして、設立後間もない業歴の浅い会社様、大手企業を退職した方が独立起業して設立した会社様、銀行からの融資をまだ得られにくい財務状況の会社様等が主体で、そこで頼ってくるのが皆さまのような取引先(仕入先)が提供してくれる金融仲介機能です。一般的に、少し長めのユーザンスを供与することにより、実際にお取引様が資金を借りているのと同様の効果をもたらすもので、それを意図的に狙ってくるお取引様が現実に存在するということです。

そこで、取引冒頭から暫く、支払い面はきっちり期日に支払いを行い続けることで、皆さまに好印象を与え、ついついその後の取引増枠の話にも乗っかってしまうというケースが実際にあります。

その果ては、取引増枠して暫くしてから、色々な理由を付けつつ、徐々に支払いが遅延し始め、その後、最終的には「リスケ要請」を正式にしてくるという事態に直面することになるのです。

基本的に、このような事例のケースは、一般的に「丸抱え与信」と言われる形の特例の与信スタイルに該当することが多いので、万が一皆さまがリスケ要請を受けた時点で取引中止を決断した途端に、お取引様の資金が回らなくなり、実質倒産の道を歩み、残念ながら皆さまの持つ債権全額が貸倒対象になってしまうという恐ろしいシナリオが成立してしまうことになります。

「丸抱え与信」の全てが決して駄目だと言っているわけではないですが、その際には、慎重なるお取引様の事前精査が必要であり、場合によっては会計事務所を起用した形での財務デューデリジャンスを実施することを弊社では強くおススメしています。丸抱え与信は、それだけ大きなリスクを伴う与信形態であるということです。

さて、次回は、今回の延長線上で、お取引様から実際にリスケ要請を受けた時の検討すべきポイントについて、分かり易く解説させて頂きます。

日頃より与信管理でお悩みの会社様がいらっしゃれば、いつでもお気軽に、弊社宛にご相談頂ければと思います。

リスク管理コンサル 髙見 広行

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