成約管理の重要性について考えてみましょう!

皆さん、本日は与信管理の話になりますが、通常の債権残高をカバーする限度管理の話ではなく、その前段階にある「成約残高の管理」という視点で語らせて頂きます。

さて、「成約」とは何か?、それはその言葉通り、お客様との間で約束を取り交わすことを指し、「成約残高」とは、その成約に基づく残高ということになります。

販売先を例に挙げれば、販売先に対して、今後、特定の物(商品)を販売することを約束する行為であり、いくら約束したかを表すのが、成約残高となります。

契約形態では、単発ベースでのスポットベースもあれば、3ヶ月から1年間に亘る長期契約(長契)の場合もあります。

販売先に対して、契約を締結して、実際に販売先に対して物を引き渡すまでの間の残高の管理になります。

言わば、近い将来、売掛金に切り替わる可能性のある残高のことであり、「売掛金予備軍」という位置付けにあるものです。

では、何故この成約残高を把握することが、与信管理にとって重要で、有効に働くことになるのか?ということについて、少し考えていきたいと思います。

通常、「信用限度」というツールを行使して、主に売掛金を管理するのが、「狭義の限度管理」です。この限度管理については、審査組織が社内で関与するのが通常であり、厳しい審査が行われることになります。他方で、「成約残高」は、信用限度というツールの対象外にあり、通常、個別に取引を担う営業部によって自主管理する残高になります。

では、信用限度で管理される売掛金という債権残高と、その前に位置付けられる成約残高とは、何も関係がないのでしょうか?

売り取引の信用限度を社内で申請する際に、営業部の皆様は何に基づいて限度額を算出されておられますか?そうですよね?まさにその時に算出根拠となるのが成約残高に他なりません。

まさに、信用限度と切っても切れない関係にあるのが、成約残高の把握なのです。この成約残高も含めて管理を行うことを、「広義の限度管理」と定義します。

適正な限度管理を行うに当たっては、単に売掛金が限度内に収まっていることだけをチェックするのではなく、それ以上に、常に成約残高の正しい把握を行い、近い将来、限度額を超過するような事態が発生しないかどうか、慎重に検証することが必要です。もしも、成約残高&今後の出荷スケジュールより見て、2ヶ月〜3ヶ月後に限度を超過する事態が予見できる場合は、直ちに審査部署に限度増額につき相談を行い、社内手続きを行う必要があります。

ここで、限度増額が社内で許可を取得できない場合は、最悪、販売先に対して、予定通り商品の引き渡しができなくなるという債務不履行が発生するリスクに繋がります。

このことは、許可枠としての信用限度の枠に収まらないような過大な成約を締結してしまったということを意味します。

ある意味、これも「潜在的な限度超過」と言われるものであり、悩ましい状況に直面します。

実務面の対応措置としては、一時的に短期限定の臨時限度(ピーク限度)の申請を行い許可を取得するか、又は、裏付の担保・保証を取得(あるいは増額)して、正式な限度増額の許可を取得するかのどちらかになるでしょう。

流石に、販売先に対して、契約キャンセルを申し出ることは現実的には不可能であり、もしそんなことをすれば、皆様の信用は失墜することに繋がるからです。

成約管理を軽視してはならない、上記のような事態に直面しないように、営業部では、自主的に成約残高の枠を設定して管理するなど、無用な「潜在的な限度超過」を引き起こさないように注意すべきであり、これこそが与信管理の真髄に繋がるものになります。

因みに、万が一販売先が倒産した場合には、この販売先に対する成約残高というものは、転売先を確保できるかどうかということが焦点になり、もし汎用性のない商品で、容易に転売が効かない商品の場合は、大きな損失に繋がる可能性を秘めていることも忘れてはなりません。

尚、この成約残高についても、社内で限度管理をしている会社様も世の中には存在します。それだけ、成約残高の管理は重要だということです。

今回は、あくまでも代表的なサンプルとして、販売先に対する売り成約に照準を当てて説明しましたが、逆に仕入先に対する買い成約というものも別途存在します。与信管理上、仕入先のチェック・管理も重要であり、別の機会に、この買い成約管理についても、詳細に説明させて頂きたいと思います。

いずれにしましても、与信管理上、成約管理の重要性について、認識を新たにして頂けますと幸いです。

リスク管理コンサル 髙見 広行

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