中国という国の本当のカントリーリスク<中国との取引で注意すべき点とは何か>

・さて、本日は、与信管理の話に絡めつつ、「カントリーリスク」について、少し触れてみたいと思います。

・カントリーリスク、それは一般的に広義の意味での非常危険(非常リスク)と呼ばれるものと、もう一つは、その非常危険に起因・付随して発生する与信リスクのことを狭義のカントリーリスクとして分類されることがあります。

・日頃より弊社が与信管理にスポットを当てた経営コンサル事業に携わっている中で、必ずお客様が直面する問題が、この狭義のカントリーリスクによる貸倒損失問題だと言って差し支えないと思います。

・今回はその中でも、日本と地理的に近い、同じアジアに存在する世界の大国「中国」について取り上げます。

・一般的な経済指標に基づく国分類においては、中国は、世界の中でも米国に次ぐ第二の経済大国として君臨し、今や世界を米国と二分する存在になっている大国で、広義の意味でのカントリーリスクは低いと見られています。

・勿論、中国は共産主義・社会主義の大国ですので、諸々の共産党上層部による情報統制が敷かれ、対外的に公表している経済指標の数値の信憑性については、兎角色々と憶測を呼ぶ国ではあります。

・しかしながら、中国に抜かれるまでは、我が国日本が第二の経済大国であったわけですが、現状の見通しでは、残念ながら日本が二度と中国を抜き返す可能性は極めて低いと言われています。

・さて、では、本題の中国の狭義のカントリーリスクについては如何でしょうか?

・まず、中国企業と新規に取引を行う上で原則となる決済条件は、一般的に、前金決済か、一流銀行開設のL/C取引を原則とする不文律があります。

・これは何を意味しているかと言えば、同国での超一流企業を除く、一般的な中国企業の支払いパフォーマンスが悪いということです。そもそも期日通りに支払わない体質・傾向が強くあります。従い、実質的に与信が発生しない形での取引スキームを構築する必要があるということです。

・その意味で、延滞債権の回収交渉に最も苦労する国の一つが中国であり、そこには日本の常識などは通じないことが良くあります。過去の経験で、逆に客先へ督促したら、逆ギレされて怒られたこともありました。

・また、もう一つネックとなるのは、中国企業の決算書の信憑性についてです。上場企業はまだしも、非上場企業ともなれば、何種類かの決算書を社内で作成し、用途別に使い分けていると言われています。仕入先用、金融機関用、信用調査機関用、税務署用などなど。これは実例ですが、同じ中国企業に対して、異なる信用調査機関で調査してレポートに添付されてきた決算内容の姿が、全く違う有り様であったということはよくありました。

・与信取引をしている仕入先に対しても、仕入先の会社毎に多少数字が違っていたりすることは日常茶飯事であると言われています。これは、即ち、決算書の数字に信頼が置けないことを意味し、粉飾決算を渡されているリスクが極めて高いということになります。尚、上場企業でも100%信憑性があるとは断言できないところに、この問題の奥深さがあります。

・そして、それに追い討ちをかけるようですが、中国国内では省ごとに法律が異なっており、担保法制度の効力の問題などは、現地弁護士に綿密に事前確認する必要があるということです。更に、前触れもなく突然法制度が変更されることもよくあり、定期的にかつ頻繁にレビューする必要があることになります。これが、仮に担保法制度ともなれば、それまで担保として認識していたものが、担保の効力に疑義が出てくることにも繋がりかねず、注意が必要です。

・上述した一連のリスク要因に基づき、中国の狭義のカントリーリスクは極めて高いと断定せざるを得ません。

・ましてや、新規取引や、初めて取り扱う商材での取引には、厳重な注意が必要です。与信供与などはもってのほかであり、万が一与信を実施するということであれば、大手の信頼できる現地会計事務所を起用した会計・財務デューデリジャンスを絶対に実施することが前提になります。時間と費用が掛かるかもしれませんが、これは避けて通れない手段だと思います。

・信用保険の活用もあるでしょうが、コストの問題と常にキャンセルされるリスクを考慮すれば、万全な保全手段とは言えません。

・また、相殺適状の買掛金留保による売掛金との相殺実行も、中国では原則認められないケースが多く、有力な保全措置として期待することはできません。

・現在、中国企業との取引に悩まれている経営者の皆さん、自社の事業拡大の為に新規に中国向けの取引を開始し、業績発展を目指されたい気持ちは良く分かりますが、まずは慎重に、そして冷静に色々なリスク分析を事前に行った上で、最終的な経営判断をなさって下さい。

・アジアに属する隣国とは言え、あらゆる部分で商習慣が異なる国であり、日本の常識がほとんど通じないと思っていても決して言い過ぎではありません。

・弊社にて、お力になれる部分が多々あるかと思いますので、中国向けの取引でお悩みの経営者の皆様、一度遠慮なく弊社宛にメールや電話等でご相談下さい。

Rユニコーンインターナショナル株式会社

リスク管理コンサル 髙見 広行

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