酒蔵を訪問する意義とは何か?

日本酒ビジネスに携わるようになって早くも5年が経過しようとしています。

まだ5年かという想いと、もう5年も経つんだ、という、2つの想いが交錯しています。

これまで色々な日本酒の酒蔵様を訪問して参りました。それぞれが独特の個性を備えたもので、日本文化の代表格である日本酒の存在を長く守り続けてきたという自負を強く感じています。

今回、私は信州松本にある岩波酒造様に、生涯3回目となる訪問をして参りました。前回の訪問は、2023年4月でしたので、1年半ぶりの訪問となりました。前回も確か東京でのイベント開催を前にしてお邪魔したわけですが、今回も来月11月9日に名古屋で開催する日本酒イベントの事前打ち合わせも兼ねての約2時間に亘る訪問となりました。

東京からは、あの特急あずさで新宿から2時間半程で辿り着く高原エリアに位置する都市になります。個人的には大好きな街でして、あの大指揮者である小澤征爾さんもこよなく愛した街になります(その結果、年1回の音楽フェスティバルの開催地となった場所です)。

10月に入っての訪問となりましたので、丁度醸造が開始されたばかりの頃でした。ただ、例年にない暑さに見舞われ、10月半ばの時期の訪問にも拘らず、昼間は半袖でも過ごせる異常な陽気でした。同時に、今年は例の米不足騒動の煽りを受けて、酒米の入荷時期も少し遅れが出たようで、その為、醸造開始時期も遅れたようです。

訪問当日は、杜氏と営業部長のお二人と旧交を温め、一部の場所を除き、蔵内の見学も初めてさせて頂きました。かつての製造キャパの大きさを偲ばせる仕込/貯蔵タンクの大きさと許容量の大きさには、本当に改めて驚かされました。

また、夜は営業部長の方と2人で松本市内にあります味わい深き蕎麦居酒屋で会食をさせて頂き、色々と有用な情報交換をさせて頂きました。それにしても、やはり信州は締めの蕎麦が美味いですね。あとは味噌とわさび、それと野沢菜に代表される漬物です。日本酒を盛り立てる食材が沢山存在しています。そして何よりも美味しくて綺麗な上質の水の存在を忘れてはなりません。

さて、酒蔵を訪問することの意義とは何か?と問われますと、やはりそれは現場で日本酒の製造・販売に携わる方々の現在の生の声を色々と聞ける機会に恵まれ、その酒蔵様が今直面している課題や改善点等を垣間見ることができる点にあります。同時に今年の醸造の状況と酒の特質をいち早く察知できることにあります。そして何よりも、酒蔵内の製造現場・雰囲気を自分の目で見ることが、貴重な財産になることです。

長野県繋がりのある方からのご紹介を得て、数年前に知り合った岩波酒造様。地元に密着した蔵であり、長野県下、とりわけ松本市内では知名度があるお酒です。お酒の味わいの方も、全体的に見て実に飲みやすく、イキの良いお酒を醸されています。どのお料理にも合わせやすい食中酒としての中道のお酒です。また、甘酒も非常に個性ある飲み口のものに仕上がっており、地元のみならず多くのファンをお持ちでおられます。

現場/客先に足を運ぶことの重要性は誰よりも熟知している私ですが、今回改めてそれを肌身で痛感しました。そう言えば、誰かが言っていましたよね?「事件は現場で起きている」と。

同時に、百聞は一見に如かず、ということです。動画や画像を何回も眺めて見るよりも、一度現場を訪れて、その場所の空気(雰囲気)、人、製造設備、お酒を、自分の目で見て、何かを感じ、何かを思うことが極めて重要だということです。

今後とも、日本酒ビジネスに携わっていく限り、酒蔵への行脚は途絶えさせてはいけない、人と人との繋がりの上にビジネスは成り立っているのであって、決して机上の空論で終わらせてはいけないということだと思います。

今回の訪問の意義を改めて噛みしめつつ、11月のイベントの成功も祈りながら、帰路につきました。

秘蔵の日本酒 高見酒店

店長:唎酒師タカミン(髙見 広行)

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